2021年6月にシマノから発売された「21 スコーピオン DC 151XG」は、DCブレーキシステムを搭載したフリースタイルベイトリールとして、多くのアングラーから注目を集めている。
実売価格2万円台後半という価格帯でありながら、上位機種と同等のI-DC5ブレーキシステムやマグナムライトスプールを搭載し、圧倒的なコストパフォーマンスを実現している。
本記事では、21 スコーピオン DC 151XGの詳細なスペック、搭載技術、実釣インプレッション、他機種との比較まで、購入を検討している方に必要な情報を包括的に解説する。
基本スペックと外観デザイン
21 スコーピオン DC 151XGは、左ハンドル仕様のエキストラハイギアモデルとして位置づけられている。
基本スペックは以下の通りだ。
品番:151XG LEFT
ギア比:8.5
最大ドラグ力:5.5kg
自重:225g
スプール寸法:径34mm/幅25mm
ナイロン糸巻量:12lb-130m、14lb-110m、16lb-100m
最大巻上長:91cm(ハンドル1回転)
ベアリング数:BB/ローラー 7/1
ハンドル長さ:45mm
ギア比8.5のエキストラハイギアは、ハンドル1回転で91cmという高い巻上長を実現し、手返しの良さが要求される釣りに最適だ。
自重225gは、DCブレーキシステムを搭載したリールとしては標準的な重量であり、一日中使用しても疲労感は少ない。
外観は、シマノらしいシックなブラックカラーを基調とし、アルミニウム合金メインフレームによる堅牢な作りが印象的だ。
サイドプレートには「SCORPION DC」のロゴが配され、DCブレーキシステムを搭載したモデルであることが一目で分かるデザインとなっている。
革新的なマグナムライトスプール(MGL)
21 スコーピオン DC 151XGの最大の進化点は、マグナムライトスプール(MGL)の搭載にある。
前モデルの17スコーピオンDCから最も大きく変わった点がこのスプールであり、キャスト性能の大幅な向上を実現している。
マグナムライトスプールは、φ34mmの超々ジュラルミン製スプールを採用し、薄肉化したうえで胴径と側面にブランキング(穴開け加工)を施すことで軽量化を図っている。
この加工により、スプールの慣性モーメントを大幅に減少させ、キャスト時の立ち上がりの良さと飛距離の向上を両立している。
重くなりがちなDCスプールにおいて、この軽量化技術は特に重要な意味を持つ。
従来のDCスプールでは、内蔵される磁石やセンサー類により重量が増加し、キャスト性能に影響を与えることが課題だった。
しかし、マグナムライトスプールの採用により、DCシステムの恩恵を受けながらも優秀なキャスト性能を実現している。
実際の使用において、このスプールの恩恵は明確に体感できる。
キャスト時の初速の向上、ルアーの飛び出しの良さ、そして着水までの安定した飛行軌道など、あらゆる面でキャスト性能の向上を感じることができる。
特に軽量ルアーから中重量ルアーまで、幅広いルアーウェイトに対応できる懐の深さは、フリースタイルリールとしての真価を発揮している。
進化したI-DC5ブレーキシステム
21 スコーピオン DC 151XGには、シマノが誇るI-DC5デジタルコントロールブレーキが搭載されている。
このブレーキシステムは、17スコーピオンDCから進化を遂げ、より細かく適切な制御を実現している。
I-DC5の最大の特徴は、5段階の外部ダイヤルと3つの内部ダイヤルによる精密なブレーキ調整にある。
外部ダイヤルは1から4までの数字と、強風時専用のW(ウインド)モードを搭載し、サイドプレートを外すことなく簡単にブレーキ力を調整できる。
内部ダイヤルは、使用するライン種類に応じて最適化されている。
P(PEライン)設定では最もブレーキ力が弱く、N(ナイロンライン)では中程度、F(フロロカーボンライン)では最もブレーキ力が強い設定となっている。
この内部ダイヤルの活用により、ライン種類を問わず最適なブレーキセッティングが可能だ。
例えば、PEラインを使用していても、ビッグベイトなどの重量級ルアーを使用する際は、内部ダイヤルをNやFに設定することで、より強いブレーキ力を得ることができる。
I-DC5の制御システムは、キャスト中のスプール回転数を常時監視し、瞬時に適切なブレーキ力を調整している。
急にルアーが失速した場合や、向かい風などの外的要因によりキャスト軌道が変化した場合でも、システムが自動的に最適なブレーキ力を提供する。
この高度な制御により、バックラッシュのリスクを大幅に軽減しながら、飛距離の最大化を図っている。
DCブレーキ特有の「ヒュィィィィン」という音も、21スコーピオンDCでは健在だ。
この音は単なる副産物ではなく、ブレーキが正常に作動している証拠でもある。
多くのアングラーがこのDC音に魅力を感じており、キャストの爽快感を演出する重要な要素となっている。
実釣においては、I-DC5の恩恵を明確に体感できる。
特に初心者や、DCブレーキに慣れていないアングラーにとって、このシステムの安心感は計り知れない。
従来のメカニカルブレーキやマグネットブレーキでは、細かな調整が必要だったが、I-DC5では大まかな設定でも十分にトラブルレスなキャストが可能だ。
マイクロモジュールギアによる滑らかな巻き心地
21 スコーピオン DC 151XGには、シマノの技術力を象徴するマイクロモジュールギアが採用されている。
このギアシステムは、繊細なギアの噛み合わせを実現し、スムーズなリーリングを可能にしている。
マイクロモジュールギアの採用により、シルキーな巻き心地を実現しているだけでなく、巻き上げ力の向上も図られている。
ギア比8.5のエキストラハイギアでありながら、重いルアーや大型魚とのファイト時でも、スムーズで力強い巻き上げが可能だ。
このギアシステムの恩恵は、長時間の釣行において特に顕著に現れる。
従来のギアシステムでは、長時間使用すると巻き心地に違和感を感じることがあったが、マイクロモジュールギアでは一日中安定した巻き心地を維持する。
また、ギアの精度向上により、ドラグシステムとの連携も向上している。
最大ドラグ力5.5kgという数値以上に、実際のファイト時における滑らかなドラグの効きは印象的だ。
急激な引きに対しても段階的にドラグが効き、ラインブレイクのリスクを最小限に抑えている。
深溝化による豊富なラインキャパシティ
21 スコーピオン DC 151XGでは、前モデルからスプールの深溝化が図られている。
この改良により、ナイロンライン12lb-130m、14lb-110m、16lb-100mという豊富なラインキャパシティを実現している。
従来のスコーピオンシリーズでは、ラインキャパシティの制約により使用できる釣種が限定される場面があったが、深溝化により釣種のアジャスト幅が大幅に拡大している。
特にソルトウォーターでの使用において、この豊富なラインキャパシティは大きなアドバンテージとなる。
シーバスゲームでは12-14lbクラスのラインを100m以上巻くことができ、ロングキャストが要求される場面でも十分に対応できる。
また、ロックフィッシュゲームでは16lbクラスの太いラインでも100m巻くことができ、根ズレ対策と飛距離の両立が可能だ。
PEラインの使用においても、この深溝化の恩恵は大きい。
PE1.5号であれば150m程度の巻量が可能で、磯場でのロックフィッシュゲームや、遠投が必要なサーフゲームにも対応できる。
ラインキャパシティの向上は、単純に巻ける量が増えただけでなく、釣りの可能性を大幅に拡げる重要な進化点と言える。
実釣インプレッション
21 スコーピオン DC 151XGの実釣性能は、様々な釣種において高い評価を得ている。
磯でのロックフィッシュゲームでは、21g~28g程度のテキサスリグやフリーリグでの使用において、その真価を発揮する。
PE1.5号を150m巻いた状態でも、重めのリグで「カッ飛び」するキャスト性能は印象的だ。
ブレーキセッティングは重いリグということもあり弱めで十分で、バックラッシュ等のトラブルは皆無に近い。
初めてDCブレーキを体験するアングラーでも、気持ちよくキャストできる安心感は、このリールの大きな魅力の一つだ。
港湾でのシーバスゲームにおいても、その汎用性の高さを発揮する。
10g前後のミノーから20g超のバイブレーションまで、幅広いルアーウェイトに対応し、トラブルレスで飛ばせる感覚を味わうことができる。
特に夜間の釣行では、バックラッシュのリスクを気にすることなく、積極的にキャストできる安心感は計り知れない。
太刀魚ゲームでは、メタルジグの遠投性能が重要となるが、21スコーピオンDCのI-DC5ブレーキは、外部ダイヤル1の設定でも十分なブレーキ力を発揮する。
40g前後のメタルジグでも安定したキャストが可能で、DCブレーキとスプールの進化によるキャスト性能の向上を明確に体感できる。
巻き心地については、マイクロモジュールギアの恩恵により、一日中使用しても疲労感が少ない。
ギア比8.5のエキストラハイギアでありながら、重いルアーの巻き抵抗も軽やかに感じられ、手返しの良さと巻き上げ力を両立している。
他機種との比較
21 スコーピオン DC 151XGの位置づけを理解するため、他の人気機種との比較を行う。
vs 15メタニウムDC
価格帯が近い15メタニウムDCとの比較では、いくつかの違いが見られる。
重量面では、15メタニウムDC(200g)に対し、21スコーピオンDC(225g)と25gの差がある。
フレーム素材も、15メタニウムDCがマグネシウム合金を採用しているのに対し、21スコーピオンDCはアルミニウム合金を使用している。
しかし、両機種ともI-DC5ブレーキシステムを搭載しており、ブレーキ性能に大きな差はない。
価格面では21スコーピオンDCの方が安価で、コストパフォーマンスを重視するアングラーには魅力的だ。
キャストフィールについては、15メタニウムDCの方が遠投性に優れるが、21スコーピオンDCも十分な性能を有している。
vs 17スコーピオンDC
前モデルとの比較では、21スコーピオンDCの進化が顕著に現れる。
最も大きな違いは、マグナムライトスプールの搭載により、飛距離が明らかに向上している点だ。
また、深溝化によりラインキャパシティが向上し、対応できる釣種の幅が大幅に拡大している。
DCブレーキシステムは両機種ともI-DC5を搭載しているが、スプールの軽量化により、21スコーピオンDCの方がより効果的にブレーキシステムを活用できている。
vs SLX DC
より安価なSLX DCとの比較では、21スコーピオンDCの優位性が明確だ。
マグナムライトスプールの搭載、アルミニウム合金フレーム、マイクロモジュールギアなど、上位機種の技術が惜しみなく投入されている。
価格差を考慮しても、長期間使用することを考えれば、21スコーピオンDCの方がコストパフォーマンスに優れると言える。
適用釣種と推奨セッティング
21 スコーピオン DC 151XGは、「フリースタイルDC」として様々な釣種に対応できる設計となっている。
バス釣りでは、5g~20g程度のルアーを中心に、オールラウンドに使用できる。
内部ダイヤルをP(PEライン)に設定し、外部ダイヤルを2~3に設定することで、トラブルレスなキャストが可能だ。
シーバスゲームでは、10g~25g程度のルアーに最適化されている。
ナイロンライン12-14lbを使用する場合は、内部ダイヤルをN、外部ダイヤルを2~3に設定することを推奨する。
ロックフィッシュゲームでは、15g~30g程度のリグでの使用が中心となる。
PE1.5号を使用する場合でも、重いリグを使用する際は内部ダイヤルをNやFに設定することで、より安定したキャストが可能だ。
チニングゲームでは、軽量リグから中重量リグまで幅広く対応できる。
特に感度が重要となるこの釣りにおいて、マイクロモジュールギアによる滑らかな巻き心地は大きなアドバンテージとなる。
メンテナンスと注意点
21 スコーピオン DC 151XGは、ソルト対応モデルとして設計されているが、適切なメンテナンスは必須だ。
ソルトウォーターでの使用後は、必ず真水での洗浄を行い、塩分を完全に除去する必要がある。
特にDCブレーキシステムは精密な電子部品を含むため、水の侵入には十分注意が必要だ。
定期的なオーバーホールも重要で、年に1回程度は専門店でのメンテナンスを受けることを推奨する。
DCブレーキの動作に異常を感じた場合は、無理に使用を続けず、早めに点検を受けることが重要だ。
また、ベアリングの状態がDCブレーキの性能に直接影響するため、ベアリングのメンテナンスも怠らないようにしたい。
総合評価とまとめ
21 スコーピオン DC 151XGは、2万円台後半でDCブレーキシステムを体験できるハイコストパフォーマンス機として、多くのアングラーに推奨できるリールだ。
マグナムライトスプールの搭載により前モデルから大幅にキャスト性能が向上し、I-DC5ブレーキシステムによりトラブルレスな釣りを実現している。
深溝化によるラインキャパシティの向上は、対応できる釣種の幅を大幅に拡げ、真の意味での「フリースタイルリール」として機能している。
マイクロモジュールギアによる滑らかな巻き心地は、長時間の釣行でも疲労を感じさせず、一日中快適な釣りを楽しむことができる。
ただし、第一に遠投性を求める場合は、より上位機種を検討することも必要だ。
21スコーピオンDCのブレーキ設定は安全側に振られており、トラブルレス重視の設計となっている。
それでも、この価格帯でこれだけの技術を投入したリールは他に類を見ず、DCブレーキ入門機として最適な選択肢と言える。
初心者からベテランまで、幅広いアングラーが満足できる性能を有しており、長期間にわたって愛用できるリールとして強く推奨したい。
ソルト対応により海釣りにも対応し、バス釣りからソルトルアーゲームまで、一台で様々な釣りを楽しめる汎用性の高さも魅力の一つだ。
21 スコーピオン DC 151XGは、現代のベイトリールに求められる性能を高次元でバランスよく実現した、真のフリースタイルDCリールとして評価できる逸品である。